50 木曽海道六拾九次之内 御嶽
(きそかいどうろくじゅうきゅうつぎのうち みたけ)

広重画 版元錦樹堂

 細久手宿から御嶽(嵩)宿に至る途中の謡坂(うとうざか)村にあった「木賃宿(きちんやど)」が描かれたと考えられている。
 木賃宿は米を持参して自炊するための木賃(薪代)だけを支払えば宿泊できる宿で、囲炉裏(いろり)を囲んだ笈摺(おいずる)姿の女巡礼、膝を抱えた旅人たちの和やかな会話の様子、そして今まさにこの宿に着いて草鞋(わらじ)を脱ごうとする旅人など、いかにも生き生きとした表現描写が当時を彷彿(ほうふつ)とさせる。左に描かれた背負子(しょいこ)に荷物を乗せて来る女性の上半身だけの表現は、この木貨宿が峠の上部に位置していることを示すとともに、さり気なく雌雄一番(ひとつがい)の鶏を配している点など、広重らしさがかいま見える。
 旅情に加え人と人との一時のふれあいを実にうまく表現している作品といえる。