味噌洞の狸 1/9  
     

 比衣(ひえ)の奥の味噌洞ちゅうとこに、ずっと昔から佐々木喜左衛門という人が住んでおったそうや。この家は先祖代々の造り酒屋で、主人の名前は代々が喜左衛門さやった。つまり、お父さんが年をとって隠居して、若い者があとをついで商売をするようになると、家の仕事と一緒に名前をついで喜左衛門という名になる。つまり二代目喜左衛門や。二代目が病気でなくなるとでもすると、その子が三代目の喜左衛門になるちゅう道理や。人は変わっても名前はずっと同じわけやな。今のように役場へ正式に届け出ならんという法律できめられとらんもんでやな。