古だぬき 2/14  
     

  その溝で木ちん宿(旅人が米を出して、宿でたいてもらって食べる安い宿)のおかんおばあが、茶碗なんかを洗っておったそうや。暑い夏のお天道様が西の山にかくれて、どうやらひと息つけるようになった頃を見はからったように、一人の大きい体をした坊さんが杖をついて、ゆっくりゆっくり登って来た。
 おかんおばあの足もとで寝そべっとった小さい黒色の犬のクロが、棒でたたかれたように起き上がって、その坊さんの足もとで、物すごい声で急にほえ出した。坊さんもびっくりしたが、おかんおばあもびっくりした。今までにクロがそんな大声で精きり一杯にほえたことは始めてやった。