かまいたち 1/8ページ  
     

 六十年も六十五年も昔のことやけど、この事だけは今でもよう覚えとる。
 小和沢のような山の中に暮らいておっても、薪を作ることは大事なことでな。秋が済んで次の年の春、田んぽの支度にかかるまでは、時間のあるだけ大勢の人が山仕事に精を出いたもんや。
 わしはその年の兵隊検査(戦前には男子が満二十歳になると兵隊になれるかどうかの身体検査があった)が終わった十二月の始め頃やった。わしより、二つ年上で、まんだ嫁に行かない叔母と、大久後境の山へ行った。そこでばいたを取った残りのうらをからげておった。