三造念仏(さんぞうねんぶつ) 1/5ページ  
     

 三造ちゅう人は今から百三十年ほど昔の人や。どこで生まれて、どういうわけで謡坂へ来たかということはわかっとらんが、何でも生まれはええ家の人やったが道楽(どうらく)がすぎて、家を追い出され、流れ流れてここへござったげな。そういうわけで、おかっつあまや子供もなしで、全くの一人ぼっちやった。
 ここへ流れついてから、山持ちに頼まれて山仕事やら、地主の作(さく)男のようなことをして、その日その日を暮らしとったが、体が丈夫やったもんで、よう働いて、ちょこっとやったが自分の田んぼや草刈りの出来る白分の山も買って、どうやら一人で安気に暮らせるようになったな。