賽(さい)の神(かみ)のきつね 3/10 ページ  
     

さ、でたぞ、ばけ狐がでたがどうしてやろう、と思ったけれどもばけた狐にかかっとったら早よう家へ帰れんで、と思いなおして、しらん顔をして、馬の口をひいて娘の前を過ぎようとしたら、やさしい声で、
「もしもし、おじさん。すみませんが私を美佐野まで乗せて行ってもらえんやろうか。この辺では、よう狐がばかすちゅう話やで、おじさんはわたしを狐やと思っとりゃあすか知らんけど。わたしは美佐野の利助(りすけ)さのとこの娘やで、あやしいもんやない。昼ごろから近所の友だちとわらびを取りにきて、夢中になっとるうちに友だちとはぐれて一人ぼっちになり、その上、くたぶれてとっても美佐野まで歩けんようになったもんで、おじさんお願いします。」