賽(さい)の神(かみ)のきつね 1/10 ページ  
     

 わしの大おじいさんは西洞(さいと)の庄屋をしとって、まあまあの暮らしやったそうや。そのころ馬を二頭かっとって、一頭はまやごえをふませる馬で、もう一頭は、こんだ馬ちって荷物を運ぷ馬で、今でいうとトラックのような役をしとった。

 苗田のまわしがすんだし、長いこと土岐津へ行かんもんで、頼まれた荷物やら用事がたんとたまったもんで思い切ってでかけた。その日は早ようでかけ、先方であっちやこっちの用事をしとるうちに思わん時間をくって、とても明るいうちに家へ帰れそうにない。ちょっと早いがタ飯をすませ、少しばかりの荷物をつけて帰りかけたら、長い春の日も、どうやら暮れかけた。