比丘尼平(びくにだいら) 2/7 ページ  
     

 ある日のこと、尼さんがいつものように朝のお勤めをしてお経をあげとると、うしろの扉がスーとあいてだれかが入ったような様子やったが、尼さんは知らん顔をしとった。入ってきたのは恐ろしい顔をした人相の悪い男で、左手に小さい包みをかかえとった。
「これ、尼さんよ」
と、しわがれた声を聞いて、尼さんはうしろを振り向いて、その男をチラッと見ただけで、別段驚いた様子はない。
「おまはんは、おれを見ておそがいことはないか。ちょうどええ。おまはんを見込んで、ちょっと頼みがあるが。おれはあることで悪者に追いかけられて逃げる途中やが、この品物をちいとの間あずかってくれんか。