比丘尼平(びくにだいら) 1/7 ページ  
     

 綱木の人家のある所から、ずっと東の方に、比丘尼平という所がある。比丘尼ちゅうことは出家(しゅうけ)してお坊さんになった尼さんのことで、この尼さんは、どこの生まれで、今までどういうことをして来たのか誰にも話いたことはない。この山奥が気に入ったと見えて、小さい庵(いおり)を結んで、朝、晩お経をあげて仏さまに仕えることが一番(いちばん)の喜びやったらしい。村の人からは上品で落ち付いた様子やもんで尊敬され、時には法事に招かれたり、仏前へと供え物が届けられたりした。世を捨てた尼さんが住んでおる所が、いつの間にか、比丘尼平ちゅう名がついたやな。