椀(わん)が渕(ふち) 2/4 ページ  
     

 ある年の夏、近所のおばあが困り切っとったげな。ちゅうことは小泉(こいずみ)神(じん)社のお祭りが七月十三日から始まって、ことしも大勢のお客さまがおいでるちゅうに、出すええお椀がない。あんまりおぞくたいもんを出すとめんぼくないが、買うだけのぜにがない。
  その日、この測で洗い物をしとって、だれにいうともなしに、
「神さまか仏さまか、どうかお椀を十人前かしてくだれると、本当に助かります」
ちって、目をつぶって、手をあわせて一生懸命に拝んだげな。