孝行のほうび 1/9 ページ  
     

「おじいさんは、お正月になるといつでもこうやって、床の間に昔のおかねを出すのやね。こんなこと、よその家では、やりなれんよ」
「えらいことに気がついたなあ。これには深いわけがあってな、家中の者が昔のことを忘れんようにと思ってなあ。」

 私のおじいさんの浅次郎(あさじろう)という人は、ここの家の弥三郎(やさぶろう)さの養子に十六歳のときにきたそうや。今でいうと、高校二年生や。
 そのころは、徳川幕府が倒れて新しい明治ご一新を迎えるというような時勢でなあ。こんな山奥の田舎でも、何となく世の中が落ちつかんで騒がしいときやった。