茂兵(もへ)さとタヌキ 2/10 ページ  
     
 わしは、定使いの話で、うんざりしてしまった。こんな忙(いそが)しいときに、何ちゅうこっちゃ。殿様もちったあ百姓のことを考えて通らっせりぁええにと、ブツブツいって寝床へついた。
 次の日の朝、朝飯を食うと、びくやくわを持って、いつも集まるとこへ行って見たが、誰もおらん。どういうことやと思って、赤土を掘るとこへ行ってもだれもおらん。時間を間違えたのかと思って、しばらく腰をおろして待っとてもだれもこんもんで、隣の次平さんのところへ聞きに行ったら、次平さんのごっつあまが出てきて、そんな話は何も聞いとらんもんで、うちの人は田んぼへ行った、という話。わけのわからん中(うち)に、昼前はすんじまった。