縣(あがたの)宮 1/5 ページ  
     

 いつの時分かわからんが、大分昔のことや。毎年、田植のころはいつもの年も同じことで雨がよう降ってな。その年は格別に大雨が毎日毎日降って、川もみぞも洪水になり、あぜがぬけたりして、えらい騒ぎで、もうこれ以上降ったらどうなるか知らんと、みんな心配しとった。
  その日は朝からひどい雨で、男の人は
田んぼの見回りに行っておった。そのと
きゴーッという腹に響く気持ちの悪い音
がしたもんで、こりゃ溜池の土手が切れ
たのかと思って見たら、何と、ね山の山
抜けで、お寺の上が抜けて、お寺や近所
の木立も田んぼへ流されてしまっておっ
た。